蘭の会2011年10月月例詩集「ゴミ」




再燃  
ダストボックス  
ゴミたちとゴミでないものたち  
スモーキーマウンテン  



























再燃

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九鬼ゑ女
 

死んだふりをしていた
突然おでこを舐められた
ざらっとした舌
驚いてまぶたを開いた
猫がいた
白と黒のぶちだった
自分の顔を撫でまわしながら
大あくびをしていた

知らんぷりしてまた目を閉じた
今度は胸をつつかれた
ツンツンとした手
再びまぶたを開いた
鴉がいた
よく肥えた奴だった
覗きこむ金色の瞳が野獣のようで
ちょっとびくついた

知らんぷりしてまた目を閉じた
唇に生温かな液体の滴り
またまたまぶたを開いた
若い男がいた
排尿をしていた
男のモノがちらっと見えた
すぐにまぶたを閉じた

死んだふりというのは嘘だ
実は…私はゴミなのだ

“燃えるゴミ”なのか“燃えないゴミ”なのか
どちらかわからないので
何日も前から放置されたままになっている

身体はすっかりヨレヨレになってしまったけれど
近頃は心が熱くたぎることがある
男のモノを見たからじゃない
訳はわからない
わからないけれども、モテアマス

いつになったら収集車は来るのだろう

沸点になる前に処理してもらいたいのにな

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ダストボックス

宮前のん
 

さっきまで
あなたの中に居た命の元は
私の口の中に入って来て
ティッシュに出されたとたん
ただのゴミになった

本来なら
あなたの命の元と
私の命の元が合わさって
新しい命になるはずが
なぜかゴミ箱の中ね

生殖を目的としない行為は
どこか残酷で滑稽ね
快楽は行為を誘うエサのはずが
エサだけ盗られたワナのよう

ワナにはまったのは
どちらなのかしら ふふ
ゴミみたいに捨てられないよう
どうぞ気をつけてね

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ゴミたちとゴミでないものたち

佐々宝砂
 

切ればゴミ髪も小指も恋人も


***


<ゴミラの消失>

ゴミラは疲れてしまった。
うつむいて
とぼとぼと茶色い海辺をあるいた。

テトラポットが陽気な声で
「あたしはゴミじゃないわよ」と言った。
でもゴミラは知っていた、
テトラポットはゴミラの眷属だ。

ゴミラはやる気満々で生まれてきたのだ、
東京タワーを壊さなくちゃとおもった、
国会議事堂も壊さなくちゃとおもった、
だけど東京タワーはゴミだったし、
国会はゴミラよりゴミらしいモノでいっぱいだった。

ゴミラはなにをしたらいいかわからない。
砂浜にしゃがみこんで
涙しながら
きぐるみを脱いだ。

なかから出てきた裸のなにかが
ゴミなのかそうでないのか、
私は知らない。

ともあれゴミラはもういないのである。




<流すゴミと燃えるゴミ>

剃り落としたムダ毛って、
燃えるゴミなのかしら?
燃えるには燃えるわよね、毛なんだもの。
だけど私はそれをシャワーで洗い流す。
ムダなものは流れちまえばいいのよ。
ボウフラだのナメクジだの、
下水に住んでるなんやかやが、
私が捨てた私の一部をきっと食べるでしょう。

私の言葉も、
考えようによっては流すゴミだわね。
情報って、燃やせなくて、
ただ、流れてゆくだけ。

燃えるゴミになるのは私。
今のところまだ燃え尽くしてはいないけど、
そのうちいつか、
気持ちよく全部燃えてなくなる。
髪の毛も皮膚も骨も内臓も、
つまらない詩想も、
平凡な夢も、
もちろん、
私をいつも悩ませてきたこのムダ毛も。

ある日、きれいに燃えてなくなる。


***

ラジウムがほのかに光るゴミ塚にからだ預けてねむるイキモノ

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スモーキーマウンテン

伊藤透雪
 

おかあさんがしんじゃって しばらくしたら
おとうさんはでていったまま
いくらまってもかえってこないの
おにいちゃんとわたしだけで
しばらくしたら
おおやさんに おいだされて
おにいちゃんと とぼとぼあるいたの

よるがきたら せまいみちのすみっこで
ふたりでくっついたまますわって ねむったの
どうしたらいいんだろう
おにいちゃんもわたしもだまってた
でもね おにいちゃんのて
ぎゅっとにぎってあったかかったよ

それからわたしはみちで
おかねをくださいとおねがいして
おにいちゃんはゴミのやまにいったよ
ゴミのやまにたからものがあって
おかねにかえてくれるんだって

10ペソのおかねをもって
かえってきたおにいちゃん
てをつないでパンをかいにいったの
ちいさいパンひとつしか かえなかったけど
ふたりでわけて ゆっくりたべたよ
すこしだけおなかがあったかくなった

やねのないおうち
ゆめのおうちを みちでゆめみて
そらをみながらねむるの
おほしさまがみえるよ

それからね
おにいちゃんが あしにけがをしちゃったの
ガラスのなかにあしを いれちゃったんだって
わたしたち はだしだからね
でもおいしゃさまにもいけない

しばらくして
しらないくにのおばさんが
おにいちゃんにサンダルをくれた
でも
ゴミやまにいかないと
おにいちゃんはおかねをもらえない
わたしががんばってはたらいて
くつもほしいけど
おなかいっぱい たべたいな

おとうさん どこにいったのかな
おかあさん さびしいよ

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2011.10.15発行
(C)蘭の会
編集/佐々宝砂

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蘭の会月例詩集7月「クリーム」







バニラアイスクリームの君は 伊藤透雪


かちかちのアイスクリームをちょっとだけ
待って少しずつ
柔らかく溶けるまで
そしたらどんなに美味しいだろう

滑る白い二の腕をそっとなでた頃を思い出したよ
たまらなくなる
滑らかなその感触を今も忘れられないのか

冷えた部屋の中で抱きしめた君の
腕の冷たさを思い出してる
君は甘くて涼やかなバニラアイスクリーム
僕の体を柔らかく包むひんやりした体
甘い声でささやき微笑む君は

あああの時 君の気持ちに向き合っていれば
背中が凍り付くような寂しい別れはなかったのに
僕は焦りすぎて 君をいつも悲しませた
今更悔いても もう帰ってはこない
君の優しさを感じていたのに
君のささやきに甘く酔いしれていただけの僕は

君の全ては夏の涼やかなバニラのアイスクリーム

もう
もう溶けてしまったんだね







― 夢 ― 九鬼ゑ女


あんまり暑いから
お昼寝したのよ あたし
そしたらね
夢を見たの

ネトネトとベトベトが出てきて
こう言ったの

まんべんなくお塗りください
手の平で薄く伸ばして
そうそう、その調子

鏡にうつしたら
あら、やだわ
真っ白なおまんじゅうみたい あたし

ネトネトとベトベトはプンプン!!

そんなに怒らないでよ
わかったわ
このまま15分 待つのね

ピピピピピーーーー
タイマーが鳴って
目が覚めたら

まぁ 大変!!
おめめも おはなも おくちも
みーんな溶けちゃって
どこかに行っちゃったの

・・・・っていう   ― 夢 ―







クリイム みまにや

何も入っていない木箱
空っぽの木箱
たまに木箱の中から
ノックする音が聴こえたり
羽音が聴こえたりするらしい


まあ噂に聞いたこと



いつも寝ぼけた事ばかり
言っているキミは
そのなかに
クリイムが住んでいると
どうやら思い込んでいるようだ



クリイム
クリイム



空っぽの木箱で
左耳を塞いでいる
キミはきっとずっと
永遠に続くであろう
無音の羽音を聴いている



クリイム
クリイム




無音を渇望しているキミは
どこか遠い国から来た
人形みたいに見える
ワタシは何だか
どうしようもない気持ちになったから
永遠の無音を誘きだして
静けさを詰めて標本にした



永遠に
逝く無音
逝く羽音



標本に朱色のリボンをつけて
キミの右脳へと飛ばした



クリイム
クリイム
無音の羽音
永遠の羽音



 







クレンジング 宮前のん

>こっちに来る?って
尋ねるのが3分遅いよ
もうクレンジングクリームは
たっぷりと渦を巻いて
私の頬の8割を
侵略している
化粧は私の戦闘服
武装解除後のお誘いは
ご遠慮願いますが
ダーリン



あん、もう。

 


 

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